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評価:5
漫画家を目指すものなら一度は夢見たことがある、週刊少年ジャンプ。そのジャンプ編集部が出版した「漫画の描き方の本」です。
漫画の技術論を説いた本はいくつか見かけますが、それとはまったく違った視点から漫画論を説いています。
作家が漫画を描く動機はいろいろありますが、一番は「好き」だから「描きたいから」。
その気持ちを尊重し、今描けない人。描けなくなった人。手が止まっている人、そんな人に向けて本書は出版されました。
読めば描きたい欲が溢れだしてくる本書は、週間ジャンプを目指さなくても趣味で漫画を描く人もおすすめ。
自分の描きたいものを形にする術が載っている、唯一無二の漫画技術書です。
それでは本書「描きたい!!を信じる 少年ジャンプがどうしても伝えたいマンガの描き方」の内容紹介、レビューをしていきます。
クリックできる目次
「少年ジャンプがどうしても伝えたいマンガの描き方」の内容
本書のターゲットは『漫画を描き始めた初心者』です。
完全初心者が対象とあって、細かいテクニックやノウハウを語っておらず、いかに自分の好きなものを描くか。に焦点を当てた内容になっています。
これは漫画を描く前にテクニックを知ると、それにとらわれて思うように描けなくなることへの配慮。
テクニックよりも、好きなものを描く熱量を大切にしています。
タイトルにある「描きたい!を信じる」に沿っていますね。まさにジャンプって感じがします。
本書「少年ジャンプがどうしても伝えたいマンガの描き方」は全6章+aで構成されています。
本の目次に沿って内容を紹介していきます。
第1章:技術論の前に「描きたいものを育てる」
描きたいものに勝る熱量はなし。
漫画の技術論よりも、好きを突き詰めることの大切さを説いています。
そしてその好きをどう表現すれば、より伝わるのか。それを考えることが技術の向上につながっていく。全ては「好き」からはじまる、ということですね。
漫画の技術に関しては、好きな作品を丸ごと模写することを勧めています。これもまた好きな作品だからこそ、継続できるし細部まで見れますね。
漫画を描くには好きで周りを囲うことが大事なんだと実感させられます。
第2章:2ページ漫画を描こう
おそらく本書の一番の『肝』となる章。この章は何度も読んで体に叩き込ませたい内容です。
漫画のコマ割りの何たるか、を説いています。
メインはジャンプ作家4名による2ページ漫画の実演と解説です。
上記のネームは「銀魂」の空知英秋先生。
会社を首になった人が、公園にいた子供からクワガタをもらって励まされる。このお題にそって漫画を実演しています。
作家さんは全部で4名です。
- 白井カイウ先生
- 附田裕斗先生
- 筒井大志先生
- 空知英秋先生
お題は2つ。
下校中の男子2人がひったくり犯を捕まえる
【お題2】
会社を首になった人が、公園にいた子供からクワガタをもらって励まされる
各先生によって見せ方や、シチュエーションが違って面白いです。
そして一番参考になるのはその解説。
どういう狙いや考えで、そのコマ割りや見せ方をしているのかを知れます。…これがすごい…!
すべてのコマに意味があるので、これを知るだけでコマ割りがうまくなれる気がします。
現役の漫画家、しかも大ヒットさせた作家さんの思考は、他の本では決して知れない貴重なもの。
第3章:ジャンプ作家アンケート
計16人のジャンプ作家さんにとったアンケート。その内容はこちら。
- 漫画を描き始めたころに一番知りたかったこと
- 漫画家を目指すためにしたこと
- ネームを直すときに気をつけること
- 連載前に準備しておくべきこと
- 漫画を描くときに心がけていること
- 魅力あるキャラにするには?
- 魅力あるキャラを作る練習した?
- 初投稿・持込みまでにどのくらい描いた?
- 読みやすい漫画にするために気をつけてること
- 1話(19P)のネームを完成させる時間は?
- 1話(19P)の原稿作画を完成させる時間は?
- 漫画のネタ出しや話作りのために何かしてる?
- 読切り漫画を描くときに何を参考にしてる
- 漫画家を目指すためにしたこと
回答は十人十色といった感じでした。
キャラ作りや練習方法。作画にかかる時間までそれぞれなので、自分に合った作家さんの回答を参考にするのがいいですね。
その中でも共通するのが、「分析」と「読みやすさ」を意識している作家さんが多くいました。
自分は何が得意なのか。面白い漫画にあるものは何か、などの分析。自分の漫画を読みやすくするにはどうするか。
この2つはプロになるためには避けて通れない項目のようです。
第4章:悩んだら「やれるところから、好きなように」に戻ろう
この章では、描きたいけど描けない。人からの評価や批判が怖くて描けない。
何かしらの理由で手が止まっている人に向けてその解決法を、何人も売れっ子作家を見てきたジャンプ編集者からの視点で話しています。
自分で描いた作品をボツにしてしまう。心が折れてもう描けない。
そんなときに読み返すと、勇気と描く気力をもう一度もらえます。
第5章:デジタル作画のコツ
デジタル作画についての章。
解説されているのは、多くのプロが愛用しているペイントソフト「CLIP STUDIO PAINT」です。
ジャンプ作家の中でもクリスタに精通している、ミウラタダヒロ先生(ゆらぎ荘の幽奈さん)が教えてくれます。
内容はデジタルで描くときに気になる点について。
- ペンタブ・液タブどちらを使うべき?
- バックアップはどうするか
- 原稿用紙のサイズは?
- デジタルツールの解説
デジタルがはじめてなら、紙の感覚に近い液タブがおすすめ。
その際の選び方も教えてくれています。
デジタル作画のツール解説がありますが、図解がなくすべて文章で進んでいきます。
初心者には少しわかりづらいかも…。なのでデジタル作画にある程度慣れてから読み返すのがいいと思います。
液タブのおすすめについては以下の記事も参考にしてください。
液タブのおすすめ厳選10モデルと初心者からプロまで使える製品とその選び方クリスタのダウンロードは下記からできます。
第6章:アナログ作画のための道具選び
アナログで描くのに必要な「漫画の画材道具」についての章です。
例えば下図のような画材ですね。
プロがどういう理由でその画材道具を使っているのか。それを知れます。
アナログ漫画に必要な画材をまとめると以下になります。
- シャーペン(濃さ)
- 漫画原稿用紙
- ペン
- インク
- 定規
- 消しゴム
- 修正液
- ミリペン
- カッター
- トレーシングペーパー
- テープ
作家さんによって多少の違いはあるものの、共通して使っている画材メーカーはほぼ同じ。
ざっとまとめると使っている各メーカー、製品はこんな感じでした。
- 原稿用紙=アイシーorデリータ
- ペン=ゼブラ
- インク=パイロットインキ製図用
- 消しゴム=MONO消しゴム
- ミリペン=ピグマ
- 修正液=ミスノン
漫画を描いていくと必ずここにたどり着きますね。
これはもう鉄板です。
アナログ漫画を描くのに必要な画材については、下記でもまとめていますので参考にしてください。
【完全初心者】漫画を描く道具とおすすめの画材を解説「少年ジャンプがどうしても伝えたいマンガの描き方」のレビュー
読んだ率直な感想は「好きに勝る熱量はなし」です。
さすが少年ジャンプ。ジャンプ漫画さながらに胸をアツくするのが上手いです。
漫画を描くために必要なもの、それが「好き!描きたい!」という気持ち。それを繰り返し伝えています。
漫画が描けない人の指南書、といっても過言ではありません。漫画が描けない原因は何か?スキルが不足している?知識が足りない?
いいえ、好きという気持ち、描きたいという気持ちが足りないからです。
僕は物心ついた頃から漫画を描いていましたが、そのときは確かにテクニックや描き方など一切気にしたことはありませんでした。
漫画が描きたい!描くんだ!という気持ちだけで、好きに自由に描いていました。
今はSNSやネットなどで不特定多数の人に見てもらえる機会も増えました。
しかしそれと同時に、不安要素も生まれましたよね。
- こんなもの描いて大丈夫かな
- 悪い評価がつかないかな
- 受け入れられるかな
- 批判されないかな
- 反応してもらえるかな
SNSやネットの上手い人たちと比べてヘコんだり、描いた作品を公開することをためらったり。
そして流行やウケを意識しすぎるあまり、迷走して描けなくなることも。
少年ジャンプはそんなこと気にせずに、好きなものを描きたいだけ描こう!と背中を押してくれます。
もちろん精神論だけではなく、技術的なことにも触れています。
ジャンプ作家さんの実演・解説付きの2ページ漫画は、漫画を描き慣れている人にとっても参考になるものばかりです。
プロのたった1コマにかける熱量も感じ取れます。これが大事。
やっぱり少年ジャンプはアツい!!!!自分の作品を見直すいいキッカケにもなりました。
漫画のテクニックを知る前に読んでほしい一冊です。
「少年ジャンプがどうしても伝えたいマンガの描き方」レビューまとめ
少年ジャンプの漫画にかける熱量がこもった本でした。
漫画の描き方のテクニックを知る前に、「描きたい!」気持ちを育てる指南書。
これほどまでの熱量で描かれた漫画の技術書は他にはありません。
読んだ後に「描きたい!」「それなら描けるかも!」と思わせてくれる凄みを感じます。
漫画が描けない、または描くのに迷ったら、本書にもどってくれば大丈夫。
きっと描けるようになりますよ。
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