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評価:4.5
絵を描くために骨格や筋肉などあるていど知っておきたい。絵を描く知識を学びたい。
そんな人におすすめのイラスト本が「アーティストのための人体解剖学:ドローイングフォーム&ポーズ」です。
本書は絵を描く上で重要なスキル、フォーム(形)・ボックスマネキン・カメラ(パース)など、いくつかのテクニックの解説と、人体の骨格・筋肉などを交えたドローイング方法について書かれています。
つまり、人体解剖学と人体ドローイングの両方を学びたい人に最適な本です。
ということで本記事では「アーティストのための人体解剖学:ドローイングフォーム&ポーズ」の内容を詳しく紹介していきます。
- ボックス描き、オーバーラップなど絵を描くための重要なスキル
- 骨格や筋肉などの人体解剖学
- 解剖学を知ったうえでどう描くかのドローイング方法
- 人体がどう動くか(ポーズ)
クリックできる目次
ドローイングフォーム&ポーズの内容
「アーティストのための人体解剖学:ドローイングフォーム&ポーズ」の目次は以下です。
本記事ではメインどころである「重要なスキル」と「人体」の章について紹介していきます。
重要なスキル
絵を描く上で重要なスキルを解説した章です。
- XYZ空間とフォーム
- シルエット、輪郭、プロポーション
- 詳細度
- ボックスマネキン
- カメラと遠近法
単純化やXYZ(幅・高さ・奥行)の意識、プロポーションやボックスマネキン(図形化)、遠近法など人体を描画する前に知っておきたい内容が書かれています。
その中でも基本的な要素、オーバーラップというパーツの前後感を出す描き方を下図では解説されています。
オーバーラップ、前後関係にあるパーツはYで示す描き方。これは他の本でも書かれている基本的な描き方なので、しっかり抑えておきたい内容です。
そしてこの章で個人的に刺さった言葉が「精度がすべてではありません」、という項目。
「信憑性は精度に勝る」、つまり正確に描くよりそれっぽく表現できれば十分、というもの。
人体解剖学を学ぶと、正確に描くことに意識が向きがち。ですが、正確さは実用性がなく退屈に見えるみたいです。
これは1/fのゆらぎ(規則性の中にも多少乱れがあったほうが心地いいと感じる)に通じるのかなと、感じました。
そして絵を描くときに大切な要素の1つである、コンテクスト(周囲との関係)。それについても書かれています。
このコンテクスト(周囲との関係)は、オブジェクト同士の前後感、大小が、一目見ただけでわかるように描かなければいけない。
つまりは空間、遠近法を意識しないといけないということです。
実はこの意識はすごく大事で、空間に人を描くのが苦手な人に取り入れてもらいたい内容。それは人物の配置や背景を描くときにも役立ちます。
その他にも絵を描く上で知っておきたいことが、たくさん書かれています。
人体
この章では人体のドローイングについて書かれています。
- レッスン1:頭部
- レッスン2:上部胴体
- レッスン3:腕と手
- レッスン4:コア
- レッスン5:脚と足
頭部
頭部は頭蓋骨のフォーム、顔の骨と組織、プロポーションの重要性を説いています。
下図はその中でも前頭骨について。前頭骨は、いわゆる「おでこ」の部分です。
顔の描き方を解説している本は数あれど、おでこに触れている本はあまり見かけません。
しかし前頭骨を学ぶと平面でないことがわかり、眉の曲線をどうかけばいいのかも理解できる重要な要素です。
その他にも目・頬・鼻・上アゴ・下アゴなど、各パーツに対して骨の形と、それを覆う筋肉について書かれています。
そして図解が石膏デッサンの像のように面取って描かれているため、立体感を把握しやすいのも特徴です。
上部胴体
上部胴体は胸郭の部分。肩や肩甲骨も含んだ領域です。下図、右ページは胸郭について。
胸郭の動きとその脂肪・筋肉の動き方について解説されています。前屈すると腹部は外へ膨らむ、など。
また大胸筋という目立つ筋肉から、広背筋・僧帽筋まで、知っておくべきその動きと見え方も解説しています。
腕と手
一見、複雑そうに見える腕と手。これも他の部分同様にパーツを単純化できます。
本章で一番特徴的だと思ったのは「肘」。基本的な腕や手の描き方はもちろんのこと、肘について解説してあるのは貴重だなと感じました。
下図はその肘についての解説。
肘はフォームの中に隠れたり、尖って見えたり、三角形のランドマーク(骨のでっぱり)で視覚化したりで表現します。
絵を描いているとポーズによっては、肘をどう描けばいいのかわからない場面があります。そういう時に役立つ内容です。
コア
コアとは胴体の下部。腹部の中央から下部にかけての部分です。
この部分をうまく描くためには、骨盤の理解が必要。下図ではそのコアと骨盤について解説されています。
単純化したときの骨盤の形によって、脚の可動域が広がることも示唆されています。
この章ではコア・骨盤のほかに、腰や腹部についても解説、性別によるプロポーションの違いにも触れられています。
脚と足
脚(太もも・すね)と足について書かれた章です。下図は足と指の解説。
くるぶしは外側よりも内側のほうが高い。足指は長方形ではなく、くさび形。小指に向かってオーバーラップが多くなる。など足を描くうえで参考になるコツが書かれています。
本記事では割愛していますが、太ももやふくらはぎなど、脚についてもしっかり解説されています。
以上が「アーティストのための人体解剖学:ドローイング フォーム&ポーズ」の内容です。
ドローイングフォーム&ポーズのレビュー
「アーティストのための人体解剖学:ドローイング フォーム&ポーズ」の良かった点は4つ。
- 図解イラストがメインでわかりやすい
- 絵を描く重要スキルがまとめてある
- おでこや肘などあまりフューチャーされない部分にも解説がある
- 関節や各パーツの動き方がわかる
図解イラストがページの大半を占めるため、視覚的にもわかりやすく、初心者でも学んでいけます。
そして「重要なスキル」の章でまとめられている、絵を描くテクニックや考え方をしっかり伝えられている点が良かったです。
その中でも“カメラと遠近法”は絵が上手くなるために必須だと個人的に思うので、その概念に触れるだけでも価値はあると感じます。(下図、右ページ)
要は人を描くときに空間を意識できているか、ですね。ほとんどのドローイング系の本では人体に終始していて、空間(パース)について触れられることがほぼほぼないです。
なのでこういった本は貴重。
あと個人的によかったのは、おでこや肘など細かな部分にも解説があること。
おでこ(前頭骨)は顔の中でも最も気にしないパーツですが、知ると「意外と平面的ではないんだな」「眉はおでこの曲線に沿ってついているのか」など、新たな発見がありました。
そして人体の各パーツや関節などの動き方も、図解イラストが豊富でとても参考になりました。
また、人体解剖学とドローイングの組み合わせの本書と、近しい部類の本に「キム・ラッキの人体ドローイング」があります。
こちらは人体解剖学と図形化(ボックス描き)を組み合わせた内容。表紙を見て分かる通り、中身のイラストは写実的。そのため練習として模写するならデッサン的になります。
本書「ドローイング フォーム&ポーズ」のイラストは単色の線画であるため、写実的なのが好みの人はこちらがいいかもしれません。
キムラッキの人体ドローイングは”キャラクターデザインの章”もあるので、イラストレーターなどと相性が良いです。
ただ写実的であるため初心者にはハードルが高く中級者向け。持っていて損はありませんが、純粋なドローイングをやりたい人には本書「ドローイング フォーム&ポーズ」がおすすめです。
ドローイングフォーム&ポーズはこんな人におすすめ
「アーティストのための人体解剖学:ドローイング フォーム&ポーズ」は、人体解剖学とドローイング方法が書かれている本です。
そんな本書をおすすめするのはこんな人。
- 絵がなかなか上手くならなくて悩んでる人
- 人ってどう描くのかわからない人
- 絵を描く知識を知りたい人
- 解剖学に基づいた本格的なドローイングを学びた人
解剖学を活用して、ゼロから人体を描きたい人に最適です。
また絵を描く上で重要なスキルの解説もあり、今まで絵の描き方や知識について触れて来なかった人にもおすすめです。
ドローイングフォーム&ポーズの書籍情報
書籍名 | アーティスとのための人体解剖学 ドローイングフォーム&ポーズ |
---|---|
ページ数 | 296ページ |
著者 | Tom Fox , 3dtotal.com |
出版社 | ボーンデジタル |
発売日 | 2023/6/29 |
ISBN-13 (ISBN-10) | 978-4862465603 (4862465609) |
価格 | 5,500円 |
ドローイングフォーム&ポーズのレビューまとめ
「アーティストのための人体解剖学:ドローイングフォーム&ポーズ」のレビューでした。
他書ではほぼ触れられていない、おでこ・肘など細かなパーツも丁寧に解説、石膏デッサン像のように立体感を把握しやすいイラスト、これらが本書の特徴。
そして絵を描くために重要なスキルとある、単純化やボックス描き、カメラなどの空間認識など、事前に解説してある点もよかったです。
人体ドローイングするなら持っておきたい1冊。
- ボックス描き、オーバーラップなど絵を描くための重要なスキル
- 骨格や筋肉などの人体解剖学
- 解剖学を知ったうえでどう描くかのドローイング方法
- 人体がどう動くか(ポーズ)