絵の基礎を固めるのに大切なデッサン。デッサンは絵画のみならず、イラストや漫画、アニメなど絵を描く対象がどれであれ、学んで損はない絵の練習法です。
本記事で紹介する本は、鉛筆で行ういわゆるデッサンだけでなく、イラストを描くのにもおすすめの本も選定しています。
イラスト・漫画などで活用できる人体デッサンの本と、鉛筆デッサンの本、そしてヌードデッサンに最適な本の3つの軸で紹介していきます。
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イラストにも使える人体デッサンでおすすめの本6選
イラストや漫画でも活用できる、初心者向きのおすすめ人体デッサン本の紹介です。
マイケルハンプトンの人体の描き方
マイケルハンプトンの人体の描き方は、骨格や筋肉など人体構造をもとに、動きを意識したデッサンを学べる本です。
図解が多いためわかりやすく、筋肉も色分けされているので、どの筋肉がどういう風についているのかも、視覚的に理解できます。
下図はその一部。筋肉と動きについて書かれています。
また人体を描くときに基本となるボックス描きや、外見からも認識できる骨、ランドマークについても解説されています。
鎖骨などのランドマークは、人物を描く上で欠かせない要素。デッサンのクオリティに直結します。
本書の特徴をまとめると、人体構造が学べ、人物を描くときの手順と動きの出し方がわかります。
人体構造を知りたい、立体感を出したい、躍動感を出したい人におすすめです。
人体の描き方マスターガイド
人体の描き方マスターガイドは、人体の構造原理知っておくべき知識や描き方練習方法が学べる本です。
著者は海外で活躍する人気の講師。執筆に約5年かかった確かな内容がそこにはあります。
本書はいきなり難しい話をせずに、まずは棒人間の簡単な人体フレームから解説していきます。
キャラを描くのに大切な、頭・胴・腰・関節の位置関係や重要性を、人体フレームで学べます。
また男女の身体の比較など、構造を知りつつシンプルな形で捉える描き方も載っています。
本書で特記すべき点は、人体パースと関節について書かれているところ。
デッサン系の本では骨格や筋肉など、人体構造の解説に終始しているものが多いです。
ですがこの「人体の描き方マスターガイド」では、関節の位置や大きさ、動かし方などで、キャラクターの体格を描き分ける方法について書かれていたり、パースに沿って人体を描く解説があったりします。
まさにキャラクターデッサンを学ぶのに最適な1冊です。
モルフォ人体デッサン
モルフォ人体デッサンは、美術解剖学ではなく形態学(モルフォロジー)からアプローチした、人体の描き方が学べる本です。
全編を通してイラストとわずかな解説で成り立っており、文章を読むのが苦手な人にも取っつきやすい内容となっています。
基本的に人体には、どうのように筋肉がついていて、外見からはどんな形になるのか、その図解イラストが1000点以上。
また模写しやすいよう、手を使わずに本を開いておける設計になっている点も実用的。
人物にどう筋肉がついているのか把握して、デッサンに活かしたい人におすすめです。
やさしい人物画
やさしい人物画は、人体の比率やパースなど、おさえておくべき基本的な描き方が学べます。
著者はA.ルーミスで絵描きの中ではかなり有名。多大な影響を与えた顔の描き方は、世界標準となっています。
またパースについて言及している点も、人物を複数描くときや、角度を変えて描くときに役立ちます。
ただし初版が1976年と昔のため、絵もそれに伴った古臭さがあります。
とはいえ人体を描くときに大切な比率や、パーツの配置の仕方などは今でも十分通用するテクニックです。
絵を描く技術がしっかり詰まっている1冊。英語版は著作権が切れているため、A.ルーミス絵画技法書pdfファイル置き場で無料で閲覧できます。
スカルプターのための美術解剖学
スカルプターのための美術解剖学は、骨と筋肉などの造形と、その動かし方を男女別で学べる本です。
他本との違いはイラストを使わず、実写と3Dで構成されているところ。そのためリアルな人体構造の比率がわかります。
下図は男女別に見る、胴体のランドマークの解説。
骨と筋肉の図解があり、実際の人物にランドマークがどう表れるのかが載っています。
続いて下図は手の構造についての解説です。
こちらも3Dモデルで構造を解説したあと、実際の人物の手に置き換えて説明しています。
イラストだけでは伝わらない、実際の人物にどう表れるのかがちゃんとわかる内容になっています。
デッサンやイラストを描くときに、構造を確認するためにデスクのかたわらに置いておくのもおすすめです。
リアルなキャラクターを描くためのデッサン講座
リアルなキャラクターを描くためのデッサン講座は、人体の描き方や動かし方、画面の魅せ方が学べる本です。
本書のおおまかな構成は人体の仕組み・動き・画面構成。
下図の右ページは歯の形の作例。
なんとなく絵を描いていると、歯の形がわかりづらかったりしますが、こんな細かいな所も抑えてあります。
また下図の走る動きは、ポイントがいくつか載っていてわかりやすいです。
漫画やアニメにも活かせる知識がきちんとあります。
続いて下図はパースの描き方。両ページとも上の絵がダメで、下が奥行きを感じる絵です。
違いは圧縮ができているかどうか。パースや遠近感を出すには、この圧縮(見える面が遠くに行くほど狭くなる)が大事。
こういった画面作りのノウハウも書かれているので、漫画やイラスト、アニメを描く人におすすめです。
鉛筆デッサンでおすすめの本3選
鉛筆で行うデッサンにおすすめの本。どれも初心者向きの内容です。
鉛筆一本ではじめる人物の描き方
鉛筆一本ではじめる人物の描き方は、感覚ではなくロジックで誰でも絵が描けることをコンセプトに置いた本です。
そのため人物を描くための、比率や形の取り方などわかりやすく書かれています。
例えば下図の横向き顔の描き方では、四角の箱の中にどのパーツがどの位置にくるのかを解説。
バランスのとり方がわかるため、明らかなデッサン狂いなどもなくなります。
また難しいポーズの描き方も、手順とポイントをしっかり押さえられています。
練習のコツなども書かれているので、模写や自分で描くときの参考にもできます。
デッサンって難しいな、と感じている人に最適な難易度。初心者や絵を始めたばかりの人におすすめです。
はじめてのデッサン教室
はじめてのデッサン教室は副題にある通り、60秒右脳ドローイングで絵が感動的に上手くなるよう作られた本です。
内容はデッサンの基礎テクニックを、効果的に学べるように構成。最速で絵心が身につけられるようになっています。
まずその前提として、どういった手順を踏んでいくかの解説があります。
60秒と制限することで強制的に右脳を働かせる。つまりモノを見て形を捉える目を養う。そして絵を描く経験を積むこと。
そして理論だけではなく、きちんとモノを捉え、表現するための方法も解説されています。
本書を読むのと理解するのに時間は要しますが、60秒と短い時間で練習できる点がメリット。
練習する時間がない人やデッサンの基礎テクニックが学びたい人におすすめです。
鉛筆デッサン基本の「き」
鉛筆デッサン基本の「き」は、基本から学びデッサンの基礎力をあげられる本です。
本書の特徴は、これからデッサンを始めたいと思った初心者にも、一から優しく教えてくれる点です。
例えば下図。絵は観察力が大事とよくいいますが、よく見て描くとはどういうことか?と、そこから解説しています。
よく見て描くことの理解をしている分、ただ練習するより上達も早まります。
また絵を描く上で基本となる、図形の描き方や練習法も載っています。
立方体は立体感を養うための訓練。楕円や直線は、思い通りに線を引くためのコントロール力が養われます。
またすべてのものは単純化した図形に置き換えられるので、図形を描く練習はそこでも発揮されます。
例えば下図の車の描き方。立方体と円でアタリを取っています。
こういったデッサンするときの基本がしっかり学べます。鉛筆デッサンを始めたいと思ったときに手に取る本として最適の1冊です。
ヌードデッサンでおすすめの本3選
ヌードデッサンをするときに活かせるおすすめの本を紹介。
表紙 | |||
---|---|---|---|
タイトル | 人体の描き方 実践トレーニング |
ビジュアルヌード ポーズBOOK |
美術解剖図ノート |
特長 | ヌードデッサンの基礎や 作品化の過程が載っている |
裸体で載っているポーズ集 模写・練習用で使える |
人体のプロポーションや 人体構造などが書かれている |
ページ数 | 136ページ | 144ページ | 250ページ |
出版社 | 芸術新聞社 | 二見書房 | 視覚デザイン研究所 |
著者 | 広田稔 | 本郷愛(モデル) | 内田 広由紀 |
人体の描き方実践トレーニング
人体の描き方実践トレーニング デッサンの基礎から人物クロッキーまでは、ヌードデッサンの基礎や作品化の過程が載っている本です。
人物の描き方では、構造や動き、部位の解説があります。下図は人物の構造を捉える方法です。
頭や胸郭、腰などを長方体の塊として捉え、組み立てていきます。
続いて下図は画面での動き。いわゆる構図です。
三角構図を使ったり、ポジ(絵本体)とネガ(絵を描いていない余白)の解説をしています。
また構図ではなく、人物の動きを捉えた描き方も載っています。
本書にはこれらの他に、立ち・座り・寝る・動きのヌードと着衣のポーズ集も収録されています。
デッサンの基礎のみならず、人物クロッキーの方法まで網羅しているおすすめの本です。
ビジュアルヌード・ポーズBOOK
ビジュアルヌード・ポーズBOOKは、着衣なしのモデルさんを色んなコンセプトで撮っているヌードポーズ集です。
ポーズ集のためデッサンの描き方などは載っていませんが、模写や練習などに使えます。
ヌードモデルや素材を探すのは大変なので、1冊でも持っておくと重宝します。
ほかのモデルさんのシリーズもでているので、好みの人や探しているコンセプトに合ったシリーズを購入するのもおすすめです。
美術解剖図ノート
美術解剖図ノートは、人体のプロポーションや人体構造などについて学べる本です。
デッサンをするときに知っておきたい人体の比率や、骨・筋肉は載っていますが、デッサンの描き方自体は載っていません。
しかし実写での図解もあるため、ヌードデッサンをするときにも役立つ箇所はあります。
ただし発売日が1984年と年代を感じさせるモデルなため、注意が必要です。
ヌードデッサンに活かすならスカルプターのための美術解剖学がおすすめ。モデルは外国人ですが実写がメインとして載っています。
デッサンに関するよくある質問
デッサンに関するよくある質問をまとめました。
デッサンの初心者は鉛筆何本くらい用意しておくべき?
鉛筆デッサンに関しては、描く工程や濃淡具合により3BからHと、幅広く使います。人によっては6B・5Bも使います。
初心者であれば3B・B・Hと3本くらいの硬度を持っていればOKです。
まずは硬度が低い3Bからアタリを取り、濃淡や細部の描き込みにあわせて硬度を変えていきましょう。
描いていくうちに自分にしっくりくる硬度がわかるようになっていきます。
デッサンは何から描く?
デッサンは人体などいきなり複雑なものから描くと難しいので、まずはリンゴや箱など簡単な形の物から入るのがいいです。
球体や立方体なら陰影もつけやすく、挫折することが少なくなります。
また鉛筆は2B以上の柔らかい芯のほうが、濃淡を出しやすいです。
とはいえ、絵は好きなものを描くのが一番長く続きます。こういった練習法を取り入れながら、適度に好きなものを好きなように描くスタイルもやってみてください。
どうすれば絵が上手くなる?
絵は絵を描く知識と練習量によって上手くなっていきます。まず基本的な要素は以下の3つ。
- シンプルな図形に置き換える
- 比率を守ってバランスよく描く
- 人体やモノの構造を知る
一見難しいモノでも円や立方体など、各パーツをシンプルな図形に置き換えること。
そしてモノの各パーツごとの比率を守ることも、絵が上手くなるうえでは重要です。
例えば人体の顔でいえば、眉とあごの中間が鼻。鼻とあごの三分の一に口がくる、など。
目の位置や腕の長さ、関節の位置など、全てに対して配置する比率があります。
この比率を守ることで、バランスの取れた上手い絵が描けるようになります。
また人体構造やモノの構造、仕組みを知ることも大切です。これらは絵を描く知識。これらの知識をもとに練習量を重ねると絵が上手くなっていきます。
デッサンでおすすめの本まとめ
デッサンでおすすめの本を紹介しました。
いくつかの本を読んでいると、共通してでてくる考え方があります。それは人体をボックスで考えること。
顔・胸・腰はボックスで捉えて、立体感を意識。そして骨組みや筋肉の構造などを理解すること。
このあたりがデッサン、しいては絵を描くうえで大切な部分となりそうです。