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評価:5
ジェスチャードローイング、通称ジェスドロ。数分でできる絵の練習法として気になっているが、やり方がわからない。そんな人もいるかと思います。
捉え方が難しい。数分で描けない。見よう見まねでやってみても、合ってるかわからない。
そんな悩みを解決してくれるのが「はじめてのジェスチャードローイング 着衣とビッグシェイプ」です。
本書ではジェスチャードローイングとは何か。どういうステップで描き進めていくのか、という捉え方と考え方、そして描き方を教えてくれるジェスチャードローイングでおすすめの本です。
難しい解剖学の話は一切なし。資料や対象を見たときに受けた印象を、より伝わるように描く技法のみが書かれています。
そのため初心者でも取っつきやすく、絵にとって大切な線に対する意識も育ててくれる良書です。
一般的な絵の描き方とは違うアプローチであるため、それがあわなかった人にとってもイラストを描くのにおすすめの本となります。
というわけで本記事では「はじめてのジェスチャードローイング 着衣とビッグシェイプ」について詳しく紹介していきます。
- 簡略化した素体の描き方
- ビッグシェイプに基づく着衣の描き方
- より伝わる絵を描くためのテクニック
クリックできる目次
はじめてのジェスチャードローイングの内容
「はじめてのジェスチャードローイング 着衣とビッグシェイプ」の目次に沿って、内容を紹介していきます。本書の目次は以下です。
Part.1 肉付け
服を着た人物を見たときに、ヌードを描けることが目標のパート。内容は以下の4つを軸に進んでいきます。
- おさらい!簡略化した素体を大切に
- 球体や円柱の向き
- パーツをつなげる
- リズムとフロー
下図は簡略化した素体や、球体・円柱の向きについての解説です。
簡略化した素体は、ラインオブアクションといって印象を線に乗せるもの。イラストの描き方でよくある図形化よりも簡単で、頭・胸郭・骨盤を表す丸と、手足を表す線を描くだけ。
大事なのは見たものを正確に描くことではなく、受けた印象をしっかり線に乗せること。
また円柱として捉えられる腕・脚も、向きや伸び縮みを意識することで、印象が違ってきます。
続いて下図はパーツをつなげる項目。頭・胸郭・腰・腕・脚の描くパーツをどうつなげるか。
各パーツは前後の位置関係を見て、オーバーラップでつなげていきます。
オーバーラップは手前にあるパーツの線は手前に。奥にあるパーツの線は、手前のパーツの線で隠す(見えない)ことで前後関係を示し、奥行きを出す技法。
このオーバーラップは部位の重なりや、関節部分などに表れます。
これはイラストを描くときに絶対に覚えておきたい内容。実践するとイラストが平面的にならない必殺技です。
Part.2 服を描く
服を描くパートでは以下の内容について触れています。
- 服は大きなかたまり
- 単純なカタチを見つける
- ビッグシェイプ
- 服のシワを描こうとしない
- まとめ
服を描くときに一番鬼門になるのがシワ。しかし本書では「必要ならシワを描き足そう」くらいの感覚でOKと、描くハードルを下げてくれています。
これは初心者にはありがたい方針。写実的に描くのではなく、印象を描くことのメリットがここでも表れています。
下図は服を大きなかたまりで描くステップ。
印象を乗せる線、ラインオブアクションを引き、衣服を単純な形として捉えて描き進めます。
このとき細部は気にしないこと。あくまで自分なりの印象と線を合致させて描くこと。
とくにシワは細部まで描き込もうとしてしまいがちなので、それは避けます。
シワについては「ラウンド」と「動き」の2点だけ意識する。その解説が下図です。
ラウンドは、立体感や向きを表す曲線のこと。おそらくラッピングラインと同じ意味合い。
シワは関節部分にラウンドと同じ向きの線を、布のたるみとして描くことで表現できます。
衣服を描くのが苦手な人でもわかりやすい方法で、実はそんなに難しくないんだと認識させられます。
Part.3 伝わる・伝える便利なツール
Part.3では印象を伝えるためのツールについて解説されています。
ツールというと道具を想像してしまいますが、ここでは表現方法と言い換えたほうが分かりやすいです。
- シンプルVSコンプレックス
- プッシュとチェンジ
- ラインクオリティーと線の表現力
下図はプッシュについての解説。よりよく伝わるように誇張することがプッシュです。
受けた印象をより誇張するために、線を直線的にするのか、曲線的にするのか、シェイプの大きさや向きなどを考えて描きます。
続いて下図はチェンジの解説。よりよく伝わるように改変することがチェンジです。
例えば受けた印象が「臆病そう」だとしたら、「より臆病そう」な印象にするにはどうすればいいか。
頭の上げ下げ、腰の落し方、手の位置、足の開き方など、少し変えるだけでも印象が違ってきます。
描き手の受けた印象が、見た人により伝わりやすくなることはもちろん、描いたキャラクターの個性や感情も伝わりやすくなる表現方法。
キャラクターイラストが描きたい人は必見の内容です。
Part.4 おわりに
このパートでは筆者の想いが綴られています。
描いた線には描き手の想いが乗る。雑に描いたり丁寧に描いたりすると、それは見る人にも分かるし、感情を乗せて描くと、それも見る人には伝わる。
書かれている内容にすごく共感しました。
Part.5 ドローイング例
ここからはドローイングの例が約50ページにわたり、記載されています。
数ある中から2つだけ紹介します。
作例は上図のような解説があるものが前半。後半は解説なしの作例となっています。
解説ありの作例は、今までの描き方を実践するとき、どう考えて描いていくかが参考になります。
いわゆる実践編といってもいいくらい。このパートのおかげで、自分が描くときのイメージが掴みやすくなるのがありがたいです。
Part.6 コラム
本書の要所要所で記載されているタメになるコラム。初心者がつまづきがちな個所を教えてくれています。
- 腕と脚、どう描く!?
- 単純化してとらえる
- ポーズと難易度と単純化
- 単純なカタチ/ビッグシェイプ/シルエット
- 見せたいのは何?
- マスターコピー
- 体感覚で覚える
- 自分なりの正解を見つける
- ジェスチャードローイングでリンクを強める
- ジェスチャードローイングは絵だけで伝える練習
下図はポーズの難易度と単純化について。
本書の筆者が思う難しいと感じる順番と、楽に描ける回数をものさしに答えてくれています。
また絵は正解がない分、迷いやすいのも事実。下図は自分なりの正解を見つけることについて触れています。
以上が「はじめてのジェスチャードローイング 着衣とビッグシェイプ」の内容です。
よくある絵の描き方の本と違う所は、印象と線にとことんこだわって描く、という点。
絵を描くにも、そもそも線がうまく描けない、ぎこちない・硬い絵になる人におすすめの内容でした。
はじめてのジェスチャードローイングのレビュー
「はじめてのジェスチャードローイング着衣とビッグシェイプ」は、資料を見て受け取った印象を、ラインや大きなかたまりとして捉えて描く技法が載っています。
具体的には身体の流れを1本の線で表し、そこから肉付け。衣服を大きなかたまり、ビッグシェイプとして捉えて描く。
大切なのは写実的に描くのではなく、見た印象を優先し誇張したり改変したりして、より伝わりやすい絵にすること。
一般的な技法書では書かれていない内容なので、絵の描き方として非常に面白く読めました。
絵の描き方は1つだけではなく、いくつかあるため今のやり方で上手くならない人は、本書の内容を取り入れてもいいかもしれません。
人体構造や解剖学の話は一切でてこないので、これに挫折した人はやってみる価値はありそう。
また最初の印象を乗せる線、ラインオブアクションはほぼ感覚のため、難しい理論より感覚で描きたい派の人にも向いていそうです。
すでに解剖学などの人体構造を勉強した人でも、その描き方とは全く違った方法であるため、新しい発見があります。
解剖学と本書のジェスチャードローイングの描き方をハイブリットしたら、絵の表現力の幅も広がりそうです。
また、本書と近しい部類の本に「リズムとフォース 躍動感あるドローイングの描き方」があります。
こちらの本は印象ではなく、生命を感じる線(フォース)を軸として、そのドローイングの技法を学べます。
はじめてのジェスチャードローイングと通じるものもありながら、なかなか奥深い本。
ただ少しわかりづらい箇所もあり、初心者には難解。ある程度絵の知識がある人のほうが活用できます。
一方はじめてのジェスチャードローイングは、初心者にもわかりやすいよう噛み砕いて説明しているので、入門編としては本書がおすすめ。
はじめてのジェスチャードローイングで物足りなくなった人は、次のステップとしてリズムとフォースへ進むのもいいかと思います。
はじめてのジェスチャードローイングはこんな人におすすめ
「はじめてのジェスチャードローイング着衣とビッグシェイプ」は、1~2分で印象をもとに作画する捉え方と考え方を学べる本。
そんな本書をおすすめするのはこんな人です。
- 絵を描くことへのハードルを下げたい
- 資料を見ても線をどう引けばいいのか分からない
- もっと楽しんで絵を描きたい
- 動きが硬いといわれる
- キャラクターイラストを描きたい
人体の骨格とか筋肉とか、難しい内容は書かれていません。
資料を見て受けた印象を伝えるための、簡略化した捉え方やさまざまな表現方法が解説してあります。
人体構造からのアプローチではなく、より”らしく”伝えるための絵の描き方。
難しいことは抜きして、楽しく絵を描きたい人にも最適です。
はじめてのジェスチャードローイングの書籍情報
書籍名 | はじめてのジェスチャードローイング 着衣とビッグシェイプ |
---|---|
ページ数 | 168ページ |
著者 | 砂糖ふくろう |
出版社 | ボーンデジタル |
発売日 | 2023/05/30 |
ISBN-13 (ISBN-10) | 978-4862465474 (4862465471) |
価格 | 2,860円 |
本書は「10パーセントの力で描く はじめてのジェスチャードローイング」の続編。
著者は学生からプロからまで広い層にジェスチャードローイングを教える、京都芸術大学の客員教授。
オンライン・オフラインで数多くの講座に登壇され、Amazonではジェスチャードローイングに関する本を数多く出版されています。
はじめてのジェスチャードローイングのレビューまとめ
「はじめてのジェスチャードローイング 着衣とビッグシェイプ」のレビューでした。
絵の描き方は1つではなく、いくつかあります。いろんな描き方を試すうちに、自分に合った絵の描き方がわかっていきます。
美術解剖学やデッサンが難しいと感じる人は、本書で解説している”らしく見える絵の描き方”を実践してみるのもおすすめです。
- 簡略化した素体の描き方
- ビッグシェイプに基づく着衣の描き方
- より伝わる絵を描くためのテクニック