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評価:4
物書きなら一度は聞いたことがある「物語の法則」。
ストーリーについて本格的に勉強したい。今より面白い物語を描きたい。
それを叶えてくれるのが「物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術」です。
ストーリーの作り方の本として完成度が高く、多くの愛用者もいるくらい実用的な内容です。
というわけで本記事では「物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術」の内容紹介と、レビューを書いていきます。
クリックできる目次
物語の法則の内容
本書「物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術」の目次は以下です。
- テーマを持つ
- “求めるもの”リスト
- 重要な取引は何か?
- 観客との契約
- 両極の対立
- 「千の顔をもつ英雄」
- 英雄の内面的な旅路
- 相互アクション
- キャラクターの機能
- キャラクターの代数方程式
- キャラクターとテオプラストス
- シノプシスとログ・ライン
- ウラジーミル・プロップのおとぎ話アプローチ
- プロップのキャラクター
- 環境的事実
- ボードビルから学んだこと
- ショーマンシップ
- プロの映画脚本家になりたい人のための五か年計画
- 映画会社は何を求めているか
内容は大きく分けると4つに要約できます。
物語の法則で解説されている、4つの要素を詳しく紹介していきます。
ストーリーについて
本書で語られる、ストーリーを描きはじめるにあたって大切なこと、をシンプルにまとめると以下になります。
- テーマを決める
- テーマに沿った、人物の欲求を決める
- その中で重要なシーンはなにか
- 読者にエンタメ性や貴重な体験が与えられるか
どんな話なのか、明確にするためテーマを決めます。
次にそのテーマにあった欲求、すなわち主人公の目的を決めます。
ここまでが準備段階。いわゆるパーツ集め。そしてもう一つ大切なのが読者(観客)です。
これから作ろうとしているストーリーで、楽しませることができるか。未知なる世界や疑似体験を見せられるか。
ここも一考します。
そしてこれらテーマ・目的・見せたいシーンをベースにストーリーを構築していきます。
この時に「対立構造」を入れるのも、忘れてはいけないストーリーの要素です。
それは例えばこんなことです。
- 立ちふさがる敵
- 口論や争い
- 価値観の違いによる対立
- 相容れない二人の恋愛
などなど。波風立たないストーリーに魅力はありません。読者の感情を揺らすこともできませんよね。
そしてこの対立はキャラクター同士だけではなく、1人のキャラクターでも成立します。
それは内なる2面性。二重人格や、性格の2面性を持ち合わせ、その人格・性格を対立させます。
つまりは両極端な2人を、1人のキャラクターに設定します。
これでもストーリーを面白く転がせるとは驚きでした。
本書「物語の法則」の醍醐味である英雄旅路を応用した部分です。
ヒーローズジャーニーで作る、ストーリーの流れは以下になります。
- 日常世界
- 冒険への誘い
- 冒険の拒否
- 賢者との出会い
- 戸口の通過
- 試練・仲間・敵
- 最も危険な場所への接近
- 最大の試練
- 報酬
- 帰路
- 復活
- 宝を持っての帰還
各ステージの説明は、本書で解説されているので割愛。
ここからヒーローズジャーニーを応用した、ストーリー理論に入っていきます。
ストーリーには主に以下の2軸があります。
- 目的を達成するための外面的旅路
- 心が成長するための内面的旅路
ヒーローズジャーニーは「外面的旅路」。主人公が目的達成のために、どんな冒険をするか。
一方「内面的旅路」は冒険の最中、主人公の心がどんな過程を経て成長するかです。
この「外面的旅路」を応用した「内面的旅路」が、本書『物語の法則』で一番の肝となる部分。
内面的旅路の流れは以下です。
- 不足した認識
- 認識の高まり
- 変化へのためらい
- 克服
- 取り組み
- 実験
- 準備
- 大きな変化
- 実績
- 再取組み
- 最後の挑戦
- 勝利
こういった心の動きがあり、主人公(キャラクター)は大きく成長する。
この外面的・内面的旅路をしっかり描くことは、人を感動させる物語には必要なことですよね。
漫画のストーリー制作でもいわれていますが、主人公は初めと最後で何かしらの変化がないといけない。
これは環境や状況など外的要素でもいいし、考えや価値観、心の強さなどの内的要素でもOK。
この「外」と「内」から変化する流れを意識して、ストーリーを作るといい作品が書けそうですね。
キャラクターについて
「物語の法則」で語られるキャラクターは、タイプと機能、活かし方など。
キャラクターは以下の8タイプ。
- 主人公(ヒーロー)
- 影(シャドウ)
- 賢者
- 使者
- 戸口の番人
- 変身するもの
- トリックスター
- 仲間
各タイプには主人公の敵対者や、力を試す者、導く者など役割があります。
役割はストーリーの段階ごとに当てはめることができ、ヒーローズジャーニーとリンクさせて作れます。
キャラクターのタイプを決めたら、次にキャラクターを機能させる項目を決めます。
項目は以下の4つ。
- 求めるモノ
- 動き
- 障害
- 選択
主人公と同じように目的を持たせ、行動させる。
目的はタイプによって変わり、主人公の敵対者(影)なら、主人公の目的とぶつかるものを設定します。
それが項目「障害」にあたり、その障害に対してどういう選択をとるのか、を決めていきます。
また「物語の法則」では、キャラクターの内面を決定づける、性格のつけ方なども解説されています。
さらに深堀り
ここまでの内容でもストーリー制作に充分活かせますが、さらに新たな理論を持ち出して深堀りしています。
それは「おとぎ話のアプローチ」と「環境的事実」。
物語の機能となる「おとぎ話のアプローチ」は、その名の通り、おとぎ話の作り方をモチーフにした理論です。
ディズニー作品はおおむね、この作り方にならっている印象。
先述してあるヒーローズジャーニーと、少し視点は違うけど構造的には似ています。
続いて「環境的事実」は世界観の構築。それは以下の項目で表せられます。
- 日付
- 場所
- 社会的環境
- 宗教的環境
- 政治的環境
- 経済的環境
物語の舞台は、いつ・どこ、なのか。ここは明確に設定したい項目です。
また主人公がその世界での社会的立場や、経済力なども設定するとリアリティが増します。
これは服装をキャラデザするときにも影響します。
社会的立場があるキャラならスーツを着てピシッと。貧乏なら小汚い恰好。など。
これらを決めると、主人公がその世界に実際に存在している説得力が生まれます。
映画会社へのアプローチ
ここは映画脚本家になるための心構えや、映画会社がなにを求めているか。を説くパートです。
本は元々、海外で出版された書籍なので、日本と事情が違うところもあると思います。
ただ「映画会社が脚本に何を求めているか」の項目では、今まで作ったストーリーのチェックリストのようなものになっています。
本書で解説されているストーリー理論にそって作り、最後はこのチェックリストで最終チェックする。
これで作品のクオリティをあげられます。
物語の法則のレビュー・感想
洋書ならではの読みにくさ(まわりくどさ)があるものの、内容はしっかりとした物語創作論です。
ストーリー理論で有名な「ヒーローズジャーニー」を体系的に学べるとともに、世界観構築の手助けとなる深みのある解説。
この両方を知ることで、今まで何となくストーリーを描いてきた人なら、劇的に上達できる内容になっています。
おそらくこれで「ストーリーを作れない」なんてことはなくなるはず。
今まで数多くのストーリー制作の本を読んできました。
その中に「SAVE THE CATの法則!本当に売れる脚本術」がありますが、それと双璧を成す1冊です。
「SAVA THE CATの法則」は作り方は三幕構成。そしてよりストーリーを面白くするための要素が解説されています。
本書「物語の法則」だけでも、かなり完成された物語を作ることは可能です。
ですが「SAVA THE CATの法則」も読んでおくと、ストーリー制作に幅がでて、いろんなタイプの物語を描けるようになるのでおすすめです。
でもまずは「物語の法則」、この1冊から。
物語の法則レビューまとめ
物語の法則はヒーローズジャーニーという、ストーリー理論を用いた物語創作術です。
そのため今まで物語を作る知識がなかった方が知ると、ストーリーが作れるだけでなく、キャラクターや世界観構築といった、作品に関わる大事な要素を把握できます。
僕は漫画描きですが、今ではこうした物語創作術を知ってからは、ストーリー制作で困ることはなくなりました。
本書は洋書ということもあり、初心者の方には難しい表現や言い回しがあります。
ページ数も約400Pあり、読むのが大変です。
サクッと読みたい。簡単に理解したい方には「物語の法則」で解説されている、ヒーローズジャーニーをはじめとしたストーリー理論を、3つ解説している下記の本がおすすです。
もっとディープに知りたい方は本書がおすすめ。
漫画・小説に使えるストーリーの作り方でおすすめの本6選!面白くするためのメソッド理論 【レビュー】SAVE THE CATの法則!本当に売れる脚本術はストーリー制作の基礎を固めるバイブル 【レビュー】シド・フィールドの脚本術!映画を書くためにあなたがしなくてはならないことは三幕構成の原点