評価:4.5
多くのプロ絵師が通ったイラストの描き方の本ともいうべき、絵描きのバイブルです。
A.ルーミスの「やさしい人物画-人体構造から表現方法まで」。
発行年が古いため、おそらくもっとも多くの絵描きさんが通った本じゃないでしょうか。
時代背景が違うため解説が現代と合わないところもありますが、絵を描く『考え方』と『人体構造』は今でも通用します。
まさに絵が上手くなるための本として最適。というわけで本記事では「やさしい人物画-人体構造から表現方法まで」の内容とレビューについて書いていきます。
クリックできる目次
ルーミスのやさしい人物画の内容
A.ルーミスの「やさしい人物画-人体構造から表現方法まで」の内容を本書の目次に沿って紹介していきます。
目次は以下のとおり。
- はじめに
- 人体画へのアプローチ
- 骨と筋肉
- ブロック形、面、遠近法、陰影
- 実際の人物の描き方:方法と手順
- 立っている人物
- 動きのある人物・回転とひねり
- 全身運動:重心線の前傾
- バランス、リズム、描写
- ひざまずいたり、かがんだり、座っている人物
- よりかかった姿勢
- 頭、手、足
- 衣服を身に着けた全身像
- 終わりにあたって
上記からさらに詳しく項目がわかれています。
たとえば「骨と筋肉」では、
- 重要な骨
- 人体前面の筋肉
- 人体背面の筋肉
- 腕の筋肉、前面
- 腕の筋肉、背・側面
というような感じ。
ではそれぞれの項目を詳しくみていきましょう。
人体画へのアプローチ
人体画を描くときの心構えや、なにが必要か。また男女でのプロポーションの違いについて解説しています。
たとえば普段の観察が大切。感情と関連した身振りや仕草はなにか。
服装によって同じ人物でも、まるで違って見えるのはなぜか。
そして男女のプロポーション・人体のバランス・見え方について軽く解説も。
骨と筋肉
ここから本格的な描き方が載っています。
男女による骨の形の違いや、「人物画として成功するための必要条件」の解説。
解説文を以下に少し引用します。
「スマート」な女性像は、いくぶん男性的な輪郭を持っているものである。肩は普通より少し広く、なで肩ではなく、腰は少し細い。
ももと脚は長めで細く、すらりとしたふくらはぎをしている。
「やさしい人物画」P50
また筋肉のつき方も図解されています。
本書には、なにも見ずに描けるようになるまで取り組むこと。と記されています。
ブロック、面、遠近法、陰影
この項目ではライティング(光の当たり方)について解説。
光の当たり方は4つに分類される。
- 明部(一番明るい)
- ハーフトーン
- 影
- 反射光
これらにどうやって光が当たるのか。人体をブロック・面ととらえ、その光の当たり方を説明しています。
実際の人物の描き方:方法と手順
実際の人物の描き方、方法と手順。とありますが、具体的な手順は記されていません。
できあがっていく絵が載っているだけです。
そして実際に人物を描く前に、ここまでの内容をできるように、と助言。
その内容がこちら。
- 理想的人体のプロポーション
- おおよその骨組み
- 遠近法と人物の関係
- 運動と動作
- 人体模型と簡単な形の組み立て
- 解剖学的構造
- 光と影によって作られる面
- 遠近感の強調
- 光と影の基本
- 本物の形の作り方
これがやさしい人物画のやさしくない一面なのかもしれません。。。
立っている人物
立っている人物を描くときの考え方を解説後、スケッチが載っています。
どの人物も立っているだけでなく、何かをやらせること。自然なジェスチャーは無数にあり、ストーリーの説明と組み合わせたり、観点や感情を表現すれば、独創性のあるものにすることは困難でないはずである。
「やさしい人物画」P84
動きのある人物・回転とひねり
動きのあるポーズとはどんなものか。それを解説したのち、体の回転・ひねりのスケッチが載っています。
前進運動:重心線の前傾
まずは前へ移動するときのポイント。運動力学について文章で解説。
そのあとに歩いている実際の写真と、走っている実際の写真があり、解説の内容を確認することができます。
写真のあとは動きのあるスケッチが載っています。
バランス、リズム、素描
バランスの取り方。片足で立ったときの重心のかかり方についての解説。
片足のときは人物は三角形になり、両足で立てば長方形になぞられる。
またリズムの感覚もとても重要。
本書では『リズムとは統一と優美な感じをもたらす連続した線の流れ』と定義しています。
ひざまずいたり、かがんだり、座っている人物
この項目では体重の移動を理解することが重要。
よりかかった姿勢(横たわった人物)
横たわった人物を描く上で大事なことは、完全にリラックスしているように見えること。
立っているポーズと同様、まっすぐつまらないポーズは避ける。
頭、手、足
まず頭(顔)で大切なのは、目・鼻などの各パーツの位置関係。
パーツの配置が正しければデッサンが崩れたように見えません。
この項目では頭部の描き方と、ライティングの見え方。そして手と足のスケッチがさらっと載っています。
衣服を身に着けた全身像
衣服も人物と同じように、その構造を理解することが大事。
服の仕立て方に注意を向け、作品に正しく生かします。
服については他の書籍で学んだ方がいいですね。
でも全編通して学べることは多いです。
翻訳の関係で文章が分かりにくいところもありますが、参考になることは間違いなしです。
ルーミスのやさしい人物画のレビュー
ルーミスの「やさしい人物画-人体構造から表現方法まで」は各項目、文章での解説があり、そのいくつかのスケッチが載っている。という構成です。
解説部分は人はこういう動きのとき、体はこうなっている。フォルムの形はこう。という内容。
まずは文章でバーッと書かれているので、読むだけだとなかなかイメージしづらい。
ですが、そのあとのスケッチとあわせて見る。模写する。と理解が早まります。
とくに重要だと感じた点は、サブタイトルに「人体構造から表現方法まで」とあるように、表現するための『考え方となる指針』を提示してくれていること。
この部分だけでも非常に有益な情報です。
本書の残念な点でもある、時代背景が現在とかなり違うことを鑑みても、この考え方の本質はとても大事です。
そして初心者を迷わす点が1つ。
具体的な描き方の手順が載っていないので、タイトルに「やさしい」とあっても初心者には難しく感じてしまうところ。
ですが人物画を描くための『人体構造を知る』というデッサン的な意味合いだと、とても「やさしい」内容です。
これ以上内容が複雑になると、おそらく初心者は挫折してしまう。
なのでまずは本書からスタートして、より詳しく知りたくなったら、もっと深く学べる本を手に取るのがおすすめです。
ルーミスのやさしい人物画のレビューまとめ
ルーミスの「やさしい人物画-人体構造から表現方法まで」のレビューでした。
人物画の描き方(手順)を学ぶには適していないですが、人体構造を知るには最適な本です。
基本的に良書なのは間違いないです。とくに絵を描くときの『考え方』は他の本では学べない本質。
この『考え方』はずーっと活きるので、それを知るだけでも十分価値があります。
下記から無料でダウンロードが可能なので、気になる方はぜひご覧ください。ただし翻訳されていないのでご注意を。
日本語で読みたい方は下記からどうぞ。
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