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評価:4.5
ストーリーはある程度つくれるのに、キャラクターはどう作っていいのか分からない。
そんな方におすすめの本が「記憶に残るキャラクターの作り方」です。
キャラ作りを体系的に学べ、実践することでどんなキャラクターも作れるようになります。
キャラが勝手に動く!といった感覚も味わえるかもしれません。
映画・漫画・小説などすべてのジャンルで活用できる、まさにキャラクターの作り方でおすすめの本です。
というわけで、本記事では「記憶に残るキャラクターの作り方」の内容を紹介していきます。
クリックできる目次
記憶に残るキャラクターの作り方の内容
「記憶に残るキャラクターの作り方」は全10章で成り立っています。
副題「観客と読者を感情移入させる基本テクニック」とあるように、どんなキャラクターが人を惹きつけるか。
という観点も含んで、その作り方を解説しています。
本書の目次は以下です。
それでは各章ごとに内容を紹介していきます。
キャラクターのリサーチをする
本書で語られるリサーチは、キャラクターに説得力やリアルな感情の変化を伝えるのに、大切な要素としています。
例えば主人公が「ホームレス」という設定なら、そのホームレスの普段の生活や人間関係、言葉遣いなどを知る必要があります。
リサーチするにあたり、実際に取材しに行ったり、自分で体験したり、リアルに触れること。
取材も体験もできないものなら、文献などで詳しく調べて知識を入れておくと、キャラクター作りに役立ちます。
キャラクターに一貫性と矛盾を与える
キャラクターに深みや、個性を出すには「一貫性」と「矛盾」が必要。
キャラを作るときは下記の過程をたどります。
- 観察・実体験に基づきアイデアを得る
- 最初の大枠を作る
- 一貫性を生むコアとなる特徴を決める
- 一貫性と矛盾する特徴を加える
- 感情・態度・価値観を与える
- 具体的なディテールを加える
ざっくりまとめると、キャラの性格を作るのに実体験や、友達・知り合いからヒントを得てもOK。
まずはそのキャラクターの一貫性を決めます。
そのうえで、その一貫性とぶつかるような、矛盾した性格をつけ加えます。
「愛する人や自分の子供には激甘」など。
そうすることで、キャラクターにギャップや深みを与えられます。
性格の次は感情や価値観を決めることで、さらにキャラクターは生き生きと存在感を増してきます。
とくに価値観は、キャラクターの行動する動機と結びついているモノ。
ここはしっかりと決めておきたい要素ですね。
バックストーリーを作る
バックストーリーとは、キャラクターの過去のこと。
このバックストーリーには2種類あります。
- 直接ストーリーに影響するもの
- ストーリーで明かされない生い立ち
直接ストーリーに影響する過去は、主人公の行動理由につながります。
例えば「人を信用しない」キャラクターなら、過去に「人に裏切られた過去」があるかもしれない。
一方、キャラの生い立ちは必ずストーリー上で説明しなくてもOKです。
例えば一人っ子で、両親の愛を独り占めして育った。
こういったものはストーリーで語る必要がありません。
なぜなら、両親の愛を受けて育った人と、虐待されて育った人とでは、人生に対する態度。
しいては人と接するときに、明確な差が生まれるからです。
キャラクターの心理を理解する
この章ではキャラクターの心理を理解しやすいよう、4つの項目にわけて解説しています。
その4項目とはこちら。
- 内面のバックストーリー
- 無意識
- キャラクターのタイプ
- アブノーマルな行動
上記4つすべてを当てはめてキャラを作るというよりかは、どれか1つを選んで作るといった感じです。
それはトラウマなどからくる心の動きか。無意識に働いている心の感情か。
性格からくる思考の道筋か。障害からくる異常な行動か。
どのキャラを作るかによっても変わりますが、一番実用的なのは「キャラクターのタイプ」で心理を理解する方法。
このタイプというのは、「感情的」や「思考的」などにわかれているので、設定しやすいです。
この2タイプでは同じ壁を目の前にしても、考えることと取る行動が違ってくるので面白いですね。
キャラクターの人間関係を作る
ストーリーは主人公1人ではなく、複数人によってつくられます。
つまり良いストーリーにするには、主人公以外のキャラクターが重要。
主人公との人間関係が重要です。人間関係は以下の4つを意識してつくります。
- 引き寄せ合うか
- 葛藤と対立があるか
- コントラストがあるか
- 変化を与えるか
ラブストーリーなら、引き寄せ合う(魅了される)関係は大切。
また主人公と正反対の性格のキャラをぶつけると、お互いの個性が引き立てられます。
対立やコントラストは個人的に知っていた作り方でした。
ですが「変化を与えるか」は違った視点で面白かったです。
良くも悪くも主人公に影響を与える存在。
闇落ちや覚醒もこういった人間関係に起因するなら、なかなか奥が深いなと感じます。
あと恋愛でよくある三角関係の作り方も、解説されているのが面白かったです。
脇役キャラクターを追加する
この章は脇役の作り方について。
脇役を作るときの指針は以下となります。
- どんな働きをさせるか
- 他キャラクターとのコントラストをつける
- ディテールを加える
主人公を際立たせるためや、主人公のポジションを明確化するために存在します。
赤リンゴと青りんご。お互い違うため両方を意識するのと同じように、主人公との対比。
はたまた脇役同士との対比を設けて脇役を作ります。
外見や性格、価値観に対比(コントラスト)をつけると、より一層脇役は輝きます。
1人欠けたら物語が成立しない、それくらい作り込むとよさそうですね。
面白い作品は人物相関図が見事だったりします。
セリフを執筆する
この章で語られるセリフには3種類あります。
- 葛藤・対立を表す
- 態度・感情を表す
- サブテキスト
サブテキストとはキャラクターの本当の感情のこと。
例えば、長く付き合った恋人が仕事で長期間遠くへ行く。
「頑張ってね」とセリフでは言うけれど、本当は「行ってほしくない」という感情がある。
その感情のこと。
これらのセリフをもとに、よいセリフ・悪いセリフについても解説されています。
よいセリフはリズム・長さが良かったり、キャラの何かを浮き彫りにしたり。
悪いセリフはどのキャラも話し方が同じ、サブテキストをそのまま言ってしまう。などがありました。
非現実的なキャラクターを作る
この章からは、非現実的なキャラクターの解説。
そのキャラクターのタイプは4つ。
- 象徴的なキャラクター
- 人間ではないキャラクター
- ファンタジーのキャラクター
- 神話的なキャラクター
象徴的なキャラクターは「スーパーマン」など、多面性・複雑性がないキャラのこと。
「いわゆるバカ」な奴や、「常にネガティブ」など一貫しており、リアルな人間にある弱みや悩みを一切見せません。
人間ではないキャラクターは、今やあちこちで見かけますね。
動物をモチーフにしたり、なにかを擬人化したり。
一番なるほど!と思った解説は、いずれも人間性を強調させる作りにすること、でした。
犬をモチーフにするなら、人間にある忠実心をクローズアップする。とか。
ステレオタイプを超越する
本書でいうステレオタイプとは、ある属性をもつ人々に対して、限定的な描写をすること。
これは同性愛や宗教、人種から、子育ては女性がするもの、といった概念まであらゆることを指します。
これらを超越するには、ステレオタイプを一面性で描かないこと、としています。
偏見や固定概念は一方向からしか見ない一面性。これはステレオタイプに陥りやすいです。
民族や職業、嗜好などあらゆるものは多面性を持っています。
「海賊」と聞くと悪いイメージがありますが、それは人により、よい海賊もいれば、悪い海賊もいる。
中国人や日本人でも同じですね。
一見、世間から悪いイメージ(あるいは良いイメージ)のモノでも、多面性を描くことによりそのイメージをくつがえすことができます。
こうすることでキャラクターの幅も広がり、メッセージの多様性も生まれます。
キャラクターの問題を解決する
ここでいうキャラクターの問題は、キャラクター自身が抱える問題ではなくて、作り手の問題のことです。
例えば以下のようなこと。
- キャラクターを好きになれない
- キャラクターが理解できない
- キャラクターがあいまい
- 脇役どうしよう
上記のような問題を解決する方法が解説されています。
ほとんどの場合、キャラクターの作り込みが甘いゆえに起こる問題だそうです。
あらゆる点から解決方法が提示されています。
記憶に残るキャラクターの作り方のレビュー
正直な感想は、キャラクターの内面を作るなら、正直この1冊ですべてを学べると思えた内容でした。
僕は漫画を何年も描いているけど、キャラ作りが苦手だったんです。
ストーリーに関しては三幕構成など、作り方の理論がしっかりある。
でもキャラ作りにおいてはその方法がなく、どうやって作ればいいのかチンプンカンプンでした。
しかし本書を読むと、キャラ作りが体系的に学べる。
とくに第2章の「キャラクターに一貫性と矛盾を与える」でキャラをつくるという輪郭がわかりました。
また「キャラクターの心理を理解する」という章があるので、ストーリーにとってご都合主義のキャラにならないようにもできそうです。
そして本書のよいところは、1人のキャラ作りにとどまらず、作品としてのキャラづくりに終始しているところ。
物語は複数人のキャラによって紡がれるので、1人だけの作り方をしっても、実はうまく機能しなかったりするんですよね。
その点、本書はキャラクター同士をうまく機能させる作り方なども解説しているので、実用的。
正直この1冊をもってるだけで、キャラ作りには困らないと思います。
本書をおすすめしない人
キャラクターの“内面”の作り方に特化しているため、「キャラデザ」や「属性・カテゴリー」などの知見は得られません。
「属性・カテゴリー」はこんなの。
- 僕っ子
- ドジっ子
- 妹属性
- メンター
- シェイプスター
- ブレイン
キャラの役割やタイプですね。
こういうのが知りたい人には本書は向いていません。
しかし一番難しいキャラクターの内面。その作り方が知りたい人には、うってつけの本です。
記憶に残るキャラクターの作り方のレビューまとめ
記憶に残るキャラクターの作り方のレビューでした。
漫画・小説・脚本などあらゆるジャンルに適用できる、キャラクター作りの大切なポイント。
それを凝縮してノウハウ化している、といった印象でした。
キャラクターと向き合うとはこういうことか、と感じられる良書。
キャラづくりで困っている・苦手な方におすすめの本です。
【漫画・小説・脚本】キャラクターの作り方でおすすめの本5選!キャラ作りに強い作家になるために