本記事のリンクには広告も含まれます
評価:5
デジタルイラストのときの色の選び方がわからない。キャラや服などの塗り方がわからない。
そもそも色の基本・知識がわかってないから塗れない。でもどうやって学べばいい?
そんな悩みを解決してくれるのが「色塗りチュートリアル -デジタル彩色の基本-」です。
本書はデジタルイラスト系の本でよくある、何人かの神絵師による塗りのメイキングが載っているわけではありません。
それ以前のもっと大事な基礎的な部分。色の見え方や光の性質など、着色するうえで根本的な考え方となる部分を解説しています。
もちろんメイキングもあり、線画から着色する手順についても知れるイラスト本。
つまり色と光の基礎知識を身につけるには最適。初心者におすすめのデジタルイラスト本です。
本書と同シリーズの「光と色のチュートリアル」も読むと、理解がさらに深まります。あわせて持っておくのがおすすめ。
というわけで本記事では「色塗りチュートリアル」の内容を紹介していきます。
- 色が見える仕組み
- 色の基礎知識
- 光の基礎知識
- 質感の表現
- ソフトの便利な機能の使い方
クリックできる目次
色塗りチュートリアルの内容
色塗りチュートリアルの内容を、本書の目次に沿って紹介していきます。目次は以下のとおり。
はじめに
わずか数ページのパートです。内容はお絵かきチュートリアルと同じ、ビジュアルライブラリーのお話。
ビジュアルライブラリーは記憶の中の資料庫で、絵を描くときはその記憶の情報を引っ張り出してきます。
ゆえに普段からたくさん観察しましょう。という内容。
あとは彩色に関するお話で、ドローイングと彩色どちらから学ぶのがいい?といった疑問にも答えています。
本書での結論は両方同時に、ということでした。それでは本題に入っていきます。
ソフトの機能を知ろう
このパートは約10ページほどで、ツールやショートカット、レイヤーの描画モードについて書かれています。
描画モードとは「乗算」や「スクリーン」、「オーバーレイ」など、下のレイヤーに対してかかる色の合成のこと。
各描画モードをイラストに乗せて、その効果と使いどころを解説しています。デジタル初心者はこの描画モードの使い方を見るだけでも参考になります。
ちなみに本書ではPhotoShopを使って説明されていますが、ソフト全般に共通する部分なのでクリスタなどでも応用が効きます。
彩色の基本
このパートも約10ページほどで構成されており、彩色の種類について書かれています。書かれている種類は以下です。
- 水彩画の塗り方
- 油絵風の塗り方
- アニメ塗り
- グレージング(グリザイユ)
どういう風に着色していくか、また便利なツールなども紹介されています。ここは基本的な塗りなので押さえておきたい部分ですね。
ルールを理解しよう
このパートでは光と色のルールについて解説されています。
塗り方の技術をいくら身につけても、このルールが理解できていないと、クオリティアップは見込めません。
例えば「光」1つにしても、考える要因はいくつもあります。
- 光源
- 光源との距離
- 光源の強さ
- 材質
- 環境
- 反射光
どれか1つ欠けてもリアリティのない絵になってしまいます。
また色を決定するのは、光の影響が強くでます。物体を照らす光が充分であれば、その物体の色をしっかりと認識できます。
しかし光が弱いと、物体に反射される光が少なくなり、色を認識できなくなります。光のない暗い部屋では、物の色が判断できないのはこのためですね。
物質によっても光の反射具合が違い、ガラスなどは光を透過するため、その後ろの物体の色が透けて見えます。
こうした光と色がどのようにして見えるのか、を理論的に教えてくれます。
光と色
光と色のパート。
まずは光から。本書では光の効果的な表現方法について書かれています。
例えば下図は光の方向、強さ、光の色によって、見え方が変わる例です。
光の強さや方向は想像つくと思いますが、光の色まで考えている初心者さんはあまりいないのではないでしょうか。
太陽光のような自然な光と、蛍光灯では強さも色も違うため、キャラを塗る色にも影響を与えます。
続いて色の理解について。色は以下の3つの要素で構成されています。
- 色相=赤・青などの色
- 明度=明るい・暗い
- 彩度=鮮やかさ
下図は上記3つを解説したもの。
色選びに役立つ知識なので、これらは必ず覚えておきたい内容です。
質感の表現
質感の表現は以下のチャプターにわかれています。
- 皮膚
- 髪の毛
- 衣服のしわ
- その他
皮膚の質感を表現するために、メラニン色素や血液、表皮など人体の仕組みから解説されているのには驚きました。
解説は下図、人体の仕組みを理解したうえで、どの色相で塗ればいいのかも書かれています。
また顔の各パーツや身体のハイライトが当たる部分なども理論的に解説。自身のイラストにもすぐに活かせる内容が載っていました。
続いて髪の毛の質感。明暗やハイライトなど、どういうふうに塗ればいいのか書かれています。
続いて衣服のシワの質感。シワができる仕組みも解説してあり、意識すべき塗り方も書いてありました。
それは線ではなく面でとらえること。シワは影の部分を塗るので面でとらえる意識が大切。
そして素材ごとの塗り方の違いも解説してありました。
その他にも、レザージャケットや鉱物、モフモフな毛の塗り方も。実例を交えて説明してくれるため、理解しやすいのも嬉しいポイントでした。
デジタル機能を活用する
約10ページほどのパート。内容は補正とエフェクトについて。頭の中で描いた雰囲気に、近づけるための方法です。
以下4つのテクニックが解説されています。
- 明暗の調整
- 空間の演出
- 衣服の柄の合成
- 雷などのエフェクト
ペイントソフトのトーンカーブやぼかしなどの機能を使い、イラストにお化粧していきます。
自分のイメージに近づけたいとき、最後の調整を加えたいときに重宝するテクニックです。
メイキング
メイキングのパートではこれまでの内容をふまえて、実際にイラストを描く手順を解説しています。メイキングの内容は以下です。
- 彩色の基本:ゴーレム
- 彩色の流れ:魔女
- 応用編:きつねちゃん
彩色の基本として最初に、シンプルな塗りであるゴーレムで手順を学びます。
そしてそのあとに魔女(の服を着たキャラ)で、彩色の流れをつかみます。
レイヤーモードや明暗、ハイライトや反射光など、これまでの内容をふまえて、一枚絵を完成させる工程が載っています。
塗りだけではなく、色や光の基礎知識からしっかり教えてくれる貴重な1冊です。
色塗りチュートリアルのレビュー
デジタルイラストを着色する前に習得したい知識、色と光の基礎知識がつまった1冊でした。
他社で発売されているデジタルイラスト系の本は、神絵師の着色工程がメインなものが多いです。
確かにプロが使うブラシや、どんな色を使っているか、どんな合成モードをかけているかを知るのは大変勉強になります。
ですがそれ以前の色や光に対する前提知識がないと、自分の作品に活かせなかったりもします。
「なんでこの色を使うの?」「なんでこの効果をつけるの?」「塗っても立体感がでませんが?」と。
この色塗りチュートリアルでは、色の見え方や光の知識を教えてくれるので、そういった疑問も解消されていきます。
本書で色と光の基礎知識を取り入れてから、他の本でプロの塗りの技術を学ぶルートがおすすめ。
他書ではあまり見ないような、有益な情報がたくさん載っていますよ。
色塗りチュートリアルはこんな人におすすめ
色塗りチュートリアルはデジタルイラストの着色で必ず必要になる、色と光の基礎知識を学べます。
そんな本書をおすすめするのはこんな人です。
- 色の選び方がわからない
- 色と光を基礎から学びたい
- 立体感のある塗りができない
- 質感の表現方法がわからない
デジタルイラストでは避けて通れない色の基本。
今まで色選びを適当にしていたり、光源の方向や強さ、種類など、あまり意識していなかった人にもおすすめです。
色塗りチュートリアルの書籍情報
書籍名 | 色塗りチュートリアル |
---|---|
ページ数 | 200ページ |
著者 | パク・リノ |
出版社 | マール社 |
発売日 | 2020/3/13 |
価格 | 2,090円 |
著者のパク・リノ氏はArteum Academyで人体ドローイング・イラスト講座の講師を務め、オンライン講座は3年待ちの大人気。
フリーのイラストレーターとしても活躍し、色塗りチュートリアルのほかに「お絵かきチュートリアル」や「光と色のチュートリアル」など合計4冊のイラスト本を出版しています。
チュートリアルシリーズの紹介
各シリーズの特長を紹介。
表紙 | ||||
---|---|---|---|---|
タイトル | お絵かき チュートリアル |
ポージング チュートリアル |
色塗り チュートリアル |
光と色の チュートリアル |
特長 | 基本的なキャラの 描き方を学べる |
魅力的に見せる ポーズを描く技術を学べる |
色と光の 基礎知識を学べる |
光の種類、ライティングを 活かした彩色が学べる |
ページ数 | 192ページ | 224ページ | 208ページ | 204ページ |
価格 | 1,870円 | 2,200円 | 2,090円 | 2,200円 |
紹介 | ||||
リンク |
基礎的なのは「お絵かきチュートリアル」と「色塗りチュートリアル」。これでキャラの描き方と塗り方が学べます。
そしてさらに進んだ内容として「ポージング・チュートリアル」と「光と色のチュートリアル」があります。
初心者はまずは基礎的な2冊から入るのがおすすめ。
色塗りチュートリアルのレビューまとめ
色塗りチュートリアルのレビューでした。
著者は学校で教えていたり、オンライン講座をやっていたりするイラストレーター。本書の内容も学校で学ぶような、色や光の仕組みから解説してある、絶対に知っておきたいものでした。
デジタルイラストを描くすべての人に見てほしい1冊です。
- 色が見える仕組み
- 色の基礎知識
- 光の基礎知識
- 質感の表現
- ソフトの便利な機能の使い方