パトリス・ルコント監督作品の自殺がテーマの物語。
テーマがテーマだけに、ダークな世界観を描いているが、それだけに終わらない深さも感じ取れます。
必死で生きようとするから死にたくなる。
必死で死のうとすると、逆に生きたくなるのかもしれない。
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スーサイド・ショップのあらすじ
自殺志願者が絶えない街。
その街で自殺志願者の為に、自殺用品を販売するお店があった。
一家でお店を経営する家族の元に、一人の赤ちゃんが産声を上げる。
お店を経営するため、全てをネガティブに考え、来客者にいろんな自殺を提案していたが、その赤ちゃんだけは違っていた。
その赤ちゃんはとても明るく、生きる喜びを知っているかのようだった。
やがて少年となったその赤ちゃんは、街から自殺者がなくなるようある計画を立てて実行しようとする…
スーサイド・ショップの感想
パッケージの雰囲気と作品のテーマが、気になったので観賞しました。
始めから暗くダークな雰囲気。
自殺者が多い街の感じを上手く描かれていて、スッと感情移入できました。
世界観は大事ですね。
ここが上手く出せていないと感情移入できずに、中途半端な作品になっていそうです。
物語の構成を大きく分けると3つ。
【1】
この作品の世界観や登場人物たちの、この世界での立ち位置を提示。
【2】
この物語のキーマンとなる赤ちゃん“アラン”が生まれて、この世界の自殺という【当たり前】に疑念を感じさせる。
【3】
その【当たり前】をぶっ壊すため、いろいろ計画を立てて実行する展開となる。
大きく分けて上記のような流れで物語は進行していきます。
【1】がしっかり描かれているから
【2】と【3】がうまく転がっていく感じですね。
【1】の段階で少し心に残った言葉がありました。
自殺志願者が、舞台となる自殺用品店へ訪れてガスや毒、首つりなど、自殺の為の手段や道具を説明され、そのどれもが高額でそれを気にした男。
それに対して店主が言った言葉が
「お安く死ねないから高額」
なるほど。
人の命はお安くないんだなっと。
自殺用品を売っている店主がさらっと、人の命の価値や尊さを知っていることを見せている。
それを知っているのに、自殺を支援するお店をやっているんだ!
と思いつつも
後の展開で店主は死を売ることに罪の意識があり、心に迷いが生じていくのですが、
それも人の命の価値を知っている、という事を見せているので、ストーリーの展開上違和感がなく自然でした。
こういう細かな描写が、作品を作るうえでとても大切だなと感じます。
このお店は家族で経営しているのですが、その子供たちは自殺をしたくても、お店がある為それができない。
自殺願望を抱えたまま。
そんな中で赤ちゃんが生まれて、家族の雰囲気が少しずつ変わっていきます。
その赤ちゃんアランが、とっても無邪気で明るいんです。
常に笑顔でお客さんに対しても、明るく接するんです。
まるで生きるのが楽しいことのように。
この作品のテーマは自殺なんですが、メッセージとしては 人生は素晴らしい! 生きるって素晴らしい! ってことだと伝わりました。
自殺から生きるって素晴らしい!に物語を展開しようと思ったら
やはり生きるって素晴らしい!と謳う人物が必要になって、自殺の雰囲気を変えていかないといけないです。
作り手としてたいていは、もうある程度大人になっていて、過去に沈んだこともあったが
誰かに救われ、生きることが素晴らしいと改心した青年に、その役割を担ってもらうんですが
この作品スーサイドショップでは、それが赤ちゃん!
この辺も上手いと感じました。
確かに赤ちゃんなら、無邪気なので死とは正反対の存在ですもんね。
きゃっきゃっと笑ったり、赤ちゃんの周りには笑顔が咲いているイメージがあるので、生きるって素晴らしいんだ!
と言葉で伝えられるより、ダイレクトに心に響きます。
最後は生きていこう!と、明るい雰囲気になるのですが、最初の自殺の暗い雰囲気から比べると、雰囲気の振り幅がすご過ぎました!
途中、明るいアランを見て、親である店主が腹を立て
タバコは体にいいからと、たくさん吸わせて死なせようとしたり、結構衝撃なシーンとかもあったのですが
最後の明るい雰囲気は良かったな。
と、正直に思える終わり方でした。
まとめ
テーマは自殺ですが、軽い気持ちで見ていただくのがいいのではないかと思います。
ところどころミュージカル調になっていて、暗くなりすぎないように配慮した作りになっていますので、
暗い話が苦手な方も、楽しんで見れるのではないかと思います。
作品としての作りも丁寧なので、ただの娯楽としても楽しめます。
人の葛藤や悩みなども描かれているので、そのあたりも見どころかもしれません。